意外な落とし穴!マンション大規模修繕工事に「景観条例」の届け出が必要な場合があります!
マンション大規模修繕工事で意外と知られていないのが、「景観条例」に基づく届け出制度です。
建物の外壁や屋根の色を変える際、実はこの届け出が必要になる場合があります。
この記事では、マンション大規模修繕における「景観条例」の届出について、具体例を交えてわかりやすく解説します。
新築の建物だけでなく、外観を大きく変更する改修工事にも適用されるケースがあるため、大規模修繕を計画しているマンションの管理組合様やオーナー様は注意が必要です。
もし届け出をせずに工事を進めてしまうと、工事の中止命令や原状回復を求められる可能性もあります。予期せぬ多額の費用や工期の遅延につながる恐れがあり、法順守の適切な対応が求められます。

景観条例の届け出が必要な工事は、景観に影響を与える外観を大きく変更する行為が該当します。
- ・外壁の塗り替えで、色味を大きく変更する工事
- ・屋根の葺き替えで、素材や色を変更する工事
- ・バルコニーの手すりをデザインや素材が異なるものに交換する工事
- ・外構を大きく変更する工事(塀の高さや素材の変更、植栽計画の変更など)
- ・既存と同色・同素材の外壁タイルへの張り替え工事
- ・住戸内の内装変更や増築
- ・外壁のひび割れなどの軽微な補修工事
新築時から条例の改正が行われているケースも稀にありますので、最新の情報を確認することが重要です。

大規模修繕工事の計画を進める前に、以下の2つのポイントを必ず確認しましょう。
②「届出の時期」を確認
①「景観区域」と「建物規模」を確認
景観条例では、景観区域ごとに建物規模が定められています。
届け出が必要かどうかは、マンション所在地が「景観区域」に指定されているか、またその景観区域で届け出が必要な「建物規模」に該当するかによって決まります。
【東京都江東区の例】
江東区景観条例を例に挙げますと、江東区では深川や亀戸の歴史ある地域を中心とした「景観重点地区」と、それ以外の「景観重点地区以外の地区」 が定められています。
・「景観重点地区」では、一戸建て住宅も含めたすべての建築物が届出対象
・「景観重点地区以外の地区」では、延べ面積が1000㎡以上または、高さ15m以上の建築物が届出対象
大規模建築物の場合は、建物規模によっては別途東京都との事前協議を要するケースがあります。
②届け出の時期を確認
景観条例では、届け出の時期が定められており、通常は工事着手の15日~30日前までとされています。
また一定規模以上の建物では、届け出前に、景観専門委員会での審議が必要になることもあります。
住民総会での合意形成や、外観デザインの変更検討には時間を要すことを考慮し、ゆとりをもったスケジュール設定が不可欠です。
景観条例に基づく届け出には、以下のようなものがあります。
- ・届出書
- ・付近の見取り図/建物の配置図/立面図
- ・変更後の仕上表(外壁の色見本など)
- ・自治体により、パースや現物サンプルを求められるケーㇲもあります。
届出書は発注者(マンションオーナー様や管理組合様)名義で行いますが、委任状を添付すれば施工業者が提出可能です。
では具体的にどのような基準になるのでしょうか
景観条例の元となる景観計画に、景観区域ごとに歴史や地域の特性を考慮した街並みのテーマを定め、それぞれの景観区域ごとにマンセル表色系による色の基準を設けています。
マンセル表色系というのは、色を色相/彩度/明度であらわした表示方法で、色を数値化した世界共通の物差しのようなものです。
ここでは、江東区の景観計画を例にご紹介いたします。
建物の色を「ベースカラー」「サブベースカラー」「アクセントカラー」の3つに区分して、区分ごとに基準色と割合を定め、建物の立面4面それぞれで算出します。
街並みに合う色を「ベースカラー」として建物全体で4/5以上、建物の表情を作る色として「サブベースカラー」と「アクセントカラー」が合わせて1/5以下となるように大枠が定められています。
そして景観区域ごとに、「ベースカラー」「サブカラー」「アクセントカラー」ごとの明度・彩度が細かに定められています。
書類作成には専門的な知識が必要となるため、大規模修繕工事の施工業者が対応することが多いですが、マンション管理組合としても、適正な届け出をしているか確認するとよいでしょう。
まずは、大規模修繕の計画初期段階で、お住まいの地域の景観条例について調べてみましょう。